あまりさんののっぴきならない事情
派遣秘書のとんでもない日常
 


 朝だ。
 カフェだ。

 いつもなら、ときめく時間なのに、心配と不安がまさって、ときめけない……。

 香ばしいパンの焼ける匂いを嗅いでも、落ち着かず、あまりはウロウロしていた。

 ……つもりだった。

 マスターに、
「いやー、今日から出張だね」
と笑いかけられ、ラムレーズンのフレンチトーストと濃いめのミルクティーを受け取る。

「まあ、合わないな、と思ったら、僕にいいなよ。
 断ってあげるから」
とマスターは言ってくれた。

「でも、あまりちゃん、こんなときでもいつも通りだから大丈夫か」

 えっ?
 いつも通り……? と首を捻りながら運んで戻ってくると、成田が居た。

 その成田に、
「成田さん、さっき、マスターに、いつも通りだから、大丈夫だねって言われたんですけど。
 私、今日は、めちゃくちゃドキドキして、挙動不審だと思うんですけどっ」
と訴えてみたのだが、

「うん。
 だから、いつも通りじゃない」
とあっさり言われる。
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