肉食御曹司に迫られて

B.C. square TOKYO ロイヤルインターナショナルホテル社員食堂

奈々は、食堂で、そのメッセージを見た。
隣には、水谷結花がいる。
「奈々。珍しく少し顔が緩んでるよ。」
結花が小声で言った。
奈々は、慌てていつもの表情に戻すと、
「気が緩んだ…」
と冷静に言った。
「何?男?」
「ちょっと、ここではそんな話できないから。」
と結花に近寄りそう言うと、周りを見た。
結花は、呆れたように、
「ホント、作りすぎ。まあ、仕方ないけど。」
と言うと、ご飯を口に入れた。


【明日、大丈夫。今休憩中。また、夜に決めよう。だだ、今日仕事の親睦会があるから、少し遅くなるかも。】
湊にメッセージを送ると、携帯をしまい、おかずに手を伸ばした。




「水谷さん、水澤さん、今日の親睦会は出席?」
声を掛けてきたのは、2つ先輩のインフォメーションの橋本雄介だった。
結花は、にっこり笑うと、
「はい、あたしも、奈々も今日は早上がりなので、行く予定です。」
奈々は、微笑を浮かべつつ、特に返事はしなかった。
3ヶ月毎に、親睦を深めるという理由で、飲み会が行われる。
もちろん、ホテルという業種上、全員が参加はできないので、その日に、早く上がれる人間はほぼ、強制的に参加…という空気が漂っていた。
「今日は、藤堂マネージャーも参加予定だから、遅れないようによろしくね。」
そういうと、橋本は帰って行った。


「奈々、まあ、仕方ないよ。出るしか。」
「わかってる、ちゃんと仕事するわよ。」
「まあ、2人で隅で、お酒飲んで話しようよ。いろいろありますって顔に書いてある。」
結花は、いじわるっぽく笑った。
「ありがと。結花のこないだの合コンの話も聞きたいし、久しぶりに飲むか…。」
(― 藤堂マネージャーも来るのか。どんな顔すれば…。)

奈々はため息をついた。
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