ドメスティック・ラブ
5.甘い痛み
いつもはアラームが鳴るかもしくは起こされるかまで熟睡しているはずの朝に弱い私が、今日はアラームが鳴り出す前に目覚めたのは、身体の上に布団よりもずっと重いものを乗せていたせいだと思う。
目が覚めて、一瞬パニックに陥って。そしてすぐに眠りに落ちる前に何があったかを思い出した。
至近距離に閉じた目。鼻と鼻の距離、およそ十センチ。少し目線を下げると、剥き出しの肩が私のそれに覆いかぶさっている。我が家の寝室に二つ並んだベッドの間は約五十センチ程空いているけれど、今の私とまっちゃんの顔の距離はそれよりよっぽど近かった。人肌が温かい。けれどとにかく、重い。
肌は割と綺麗だけれど、閉じていても目の下にほんのり隈ができているのが分かるし、少し頬が痩けた気がする。でもこれは断じて私の料理下手のせいではない、はず。
身動きが取れないので仕方なくそんな事を考えながら目の前の顔をまじまじと眺めていたら、枕元でアラームが鳴った。でも時間的に私のじゃない、まっちゃんのやつだ。
「ん……」
止めようにも今の私の状態じゃ手が届かない。
仕方なく鳴り響くままにしていると、もぞもぞと私をベッドに押さえつけている力が少しだけ緩んで、アラームが止まった。まっちゃんの目が覚めたらしい。
「……もう朝か……って、え?!」
軽くあくびをしたまっちゃんは、目をちゃんと開けてそこでようやく自分の身体の下にいる私に気がついたらしい。
「なっ……千晶?!」
「……おはよう」