「千秋先生、さっきから顔恐いですよ」

ムシャクシャした気持ちを抱えたままデスクで資料に向き合っていると、そう声をかけてきたのはアシスタントの美希ちゃん。

3つ下の26才で、私とは違って女子力の塊、みたいな子。同じ学校にいたら友達になっていないタイプだけど、主張が一貫してブレない彼女は気持ちがよくって仲良くしている。

デスクにおいてくれたコーヒーに口を付けていると

「案件抱えすぎですよ。田尻先生の、断った方がよかったんじゃないですか?」

心配そうに言ってくれる。

「ありがとう。案件がっていうよりか、相手が問題なだけだから」

そう呟くと、聞いているのか聞いていないのか

「先生の案件が増えると私の負担も増えちゃうんですからね!」

美希ちゃんらしい主張をして、思わず笑ってしまう。

「ゴメン、ゴメン。美希ちゃんが残業になんないようにはするからさ」

プライベートの予定がぎっしりの美希ちゃんにはそんなに迷惑かけないよ、という意味を込めるとと、あからさまにほっとしている。