女嫌いと男性恐怖症

「お前、こんなこともないと休まないだろ? 俺は何度か、陽菜と旅行とかで休ませてもらってるのに。二人でやってる法律事務所だ。たまには休めよ。悪いだろ」

「お前!」

 悪いと思ってるなら、こんなガキ押し付けるな。

 そう口先まで出かかった言葉を、飲み込んだ。

 さすがに本人の前で、そりゃないわな。
 と、俺にもそれくらいの礼儀はある。

 直樹が電話口で、クククッと笑ってるのが気に食わないが。

「その子。遥ちゃん。訳ありっぽいだろ? アキも、それで俺の提案を無下にしなかったんだろ?」

 いや。無下に断ったはずだ。

 そう言いたかったが、それも言えなかった。

 チラッと遥を見て、チッ。別の部屋で話せば良かったぜ。と、心の中で舌打ちをする。

「そんなんじゃねーよ」

 なんとかそれだけ言っても、直樹は晶の返事を聞いてもいないようだった。

「ちょっと心配な子だし。休みの間に、普通の生活が出来るように仲良くなってやれよ。じゃ。頼んだぜ」

 そこからは不通音だけが聞こえ、電話は一方的に切れた。
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