【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
御曹司様の愛されペット

御曹司様と無愛想な秘書

 


足元には少し弾力性のある上質な絨毯。部屋の中央には来客をもてなすために置かれた、シンプルで質のいい応接ソファー。その前においてあるテーブルの天板には、ほこりひとつ指紋ひとつ残されておらず、天井に埋め込まれた暖色系のダウンライトを美しく反射している。

その奥にある主のデスクの上に今日の会議のための資料を置いて、役員室を見回した。

オフホワイトの壁紙で囲まれた落ち着いた室内は、ほかの場所よりも少しだけ空気が濃く感じる。
それは、私の緊張のせいかもしれないし、役員室という特別な場所だからかもしれない。

この場所に仕えるようになってもう二年が経つけれど、未だにここに足を踏み入れるたびに緊張してしまう理由はふたつ。

ひとつは私がこの役員室の主である、専務の秘書だから。
総務から秘書課に異動したばかりの頃、先輩秘書に口うるさく言い聞かされた。秘書という仕事は、常に気を張りアンテナを張り巡らすのが役目だ。仕える主がなにを求めているのか、口に出されなくても察して先回りできるようになりなさいと。
主の機嫌がいいのか、苛立っているのか。急いでいるのか、疲れているのか。そっとしておいてほしいのか、それとも声をかけて気分転換した方がいいのか。
主の仕事が円滑に進むように、全神経を集中してサポートするのが役目なのだと。仕事中に緊張感をたもてないような秘書は、必要ないと。

そしてもうひとつの理由は、私が仕える主が、なんというかとても、とんでもない人だから。
どうとんでもないのかというと……。


 

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