【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい

甘いお酒と不覚の一夜

 





「詩乃ちゃん」

仕事を終え専務に挨拶をしようと役員室の扉をノックした途端、待ち構えていたように声をかけられた。

「冬木です」

いつものように訂正しながら、なにか用事があるんだろうかと専務の座るデスクに近づく。
すると「今日の予定は?」とたずねられた。

「本日は、もう特に予定は入っていませんが」

こんな時間にそんなことを聞くなんて珍しい。と思いながら首を傾げる。
しかし専務は私の答えに、くしゃっと顔を崩して楽しげに笑った。

「そうじゃなくて。詩乃ちゃんの予定」
「私の、ですか……?」
「今日これから綾崎フーズの時の同僚と飲むんだけど、詩乃ちゃんも来ない?」

綾崎フーズ。
その言葉に戸惑い口ごもる。

綾崎フーズは綾崎グループの子会社で、専務が役員になる前に勤めていた職場だ。
仕事関係の会食に秘書として同行するのならいいけれど、元同僚と楽しく飲む場所に誘われるのはおかしい気がする。

「仲の良い先輩なんだけど、俺がいつも詩乃ちゃんの自慢ばっかりしてるから、会ってみたいっていうんだよね」
「自慢って……」

一体なにを言ってるんだろうと警戒して聞き返すと、専務がにっこりと笑った。

「すごく気が利いて可愛い秘書に、毎日尽くしてもらってるって」
「私は気も利かないし可愛くもないので、人違いですね」

平然とそんなことを言う専務に、顔をしかめながら言う。

 
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