ソウル・メイト
お花見
その日の夕方。
「本日の診察は終了いたしました」という札がかけられているガラス張りのドアから、10歳くらいの男の子と母親と思われる親子が出てきた。
その親子に、看護師さんが「お大事に」と言いながら、ドアを閉めようとしていたものの、私と千鶴の姿を見つけると、ドアを閉めようとするのを止めた。

「こんにちは。あなたは確か、お掃除の・・」
「はい。国枝です。こんにちは」
「どうしました?そちらのお嬢ちゃんが急病なの?」
「いえっ。違います。安藤先生にお食事を持ってきたんです。ここからじゃないと、先生のご自宅へは伺えないと聞いていたので」
「あぁ、そうだったの。先生は診察室か処方箋室にいらっしゃるから。さ、中に入って」
「あ・・・」

私が戸惑っている間に、看護師さんはよく通る元気な声で「せんせー!」と言いながら、私と千鶴を中へ入るよう促した。

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