ハイスペックイケメンなんてお呼びじゃない!~バツイチナースは恋に無関心~
私の職場は恋するビルとか言うらしいside葉月
今日も良い天気。

片手は可愛い娘と繋いでいつも通りに駅から徒歩で出勤する先は私の勤めるクリニックが入っている複合ビル。

B.C. square TOKYO

巷では恋するビルとか言われてるらしいこのビルは
下は商業施設やクリニックにスポーツジムまであり、8~10階には不動産会社でこのビルもその会社の持ち物。
11階から26階をミドルフロアと言いそのフロアの会社勤務でも平均年収は1千万で、27階以上をアッパーフロアと呼びそこの会社に勤める人々の平均年収は4千万はあるんだとか。
そのためこのビルに勤める高収入独身男子を玉の輿狙いの女子達がこのビル外からも商業施設に出会いを求めて通うとか。

さらにアッパーフロアより上にはホテル、高級レストラン、VIPが集うバーまであるし、VIP専用ラウンジもあり、52階は謎のフロアで高収入所得者が住んでいるともっぱらの噂。

そう言われるのもアッパーフロアには世界3大コンサル会社などの有名企業が入っているからだろう。

まぁ、バツイチ子持ちのしがない看護師の私には一切関係無いし興味も無いけれど。


まぁ、私の年代の独身女性には夢が集うようなビルらしい。

まぁ、私の職場であるクリニックは商業施設階だし子どももその階にあるビルで働く人優先の保育園に入っているがその保育園の園児ももっぱら商業施設で働く看護師などの子が多い。

恋するビルは子育て女性にも優しい配慮のあるビルでバツイチで1人で子育て奮闘中の私、小林葉月にとってもありがたいビルなのである。


『ママ、今日も保育園で菜穂ちゃん真穂ちゃんに会えるかなぁ』

『そうね、きっと今日も会えるわよ。』

娘が仲良くしている菜穂ちゃん真穂ちゃんは一卵性の双子女の子で、私が勤める東海林内科クリニックの医師で院長の東海林渉先生のお子さんだ。

可愛い双子ちゃんと我が愛娘弥生は同じクラスの年長さん、
事務の友里さんの所の秋人くんは年中さんで4人は仲良しである。


ビルのエントランスホールに入ると今日もにこやかな顔の管理人田中さんに出会う。

『田中さん、おはようございます!』

弥生は毎日このエントランスホールで出会う田中さんが大好きだ。
昨春不慮の交通事故で両親が亡くなった私は文字通り頼れる先を失い何とか2人で生活出来る収入環境を探して総合病院から転職したのが今のクリニックなのだ。

商業施設なので病棟は無い。
なので夜勤もない。
またハイクラスのお客様も来るためか、お給料も住宅手当、果ては保育費補助まであるありがたいクリニックが見つかりとにかく藁にもすがる勢いで応募。


院長先生である東海林先生と同じ歳の女の子を育ててることもあり採用を決めてくれた。
それからは子どもを通して先生と奥様の美春さんとは仲良くさせていただいている。

そんな職場のおかげで両親に頼っていた時よりも時間も財布も少し余裕のある生活になった。

本当にこのビルと先生夫妻には足を向けて寝られないわ。

『弥生さん、おはようございます。今日も素敵な髪飾りですね。』

今日の弥生はうさぎさんの飾りが付いたゴムでツインテールである。
小さな子の特権!っと私がある意味生活面では不器用なので朝のバタバタ忙しい時は専ら娘の髪型はツインテールである。

その代わりに髪を結うゴムはバリエーション豊かに揃えておりそれを彼女自ら朝選ぶのが寝起きのひと仕事である。

『田中さん、ありがとう。田中さんも今日もステキよ!』

『フフ、ありがとうございます、弥生さん。』

う〜、この朝の一コマ和むわァ。

田中さんが父と同世代のようなのでうちの弥生はすっかり懐いている。

そして言動がどんどんおしゃまになるな。

成長も噛み締める一時である。

『今日も気をつけていってらっしゃいませ。』

『うん!田中さんまたね♪』

私もお辞儀して別れて商業施設フロア専用エレベーターホールに足を向ける。

和やかな一日の始まりである。


そんな和やかで、落ち着いた平和な日常が近々覆されるなんて生活面では大雑把で楽天家の私は全く想像していなかった。

何しろ恋愛方面はバツイチなもんではっきり言ってそっち方面はアンテナ遮断、いや断絶していたもので。

私達母娘を見つめる視線に全くきづいてなかったのだ。
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