ビターチョコをかじったら
たまにはドライブデートでも
「しゅっぱーつ!」
「…珍しいよな、外出したいとか言い出すなんて。」
「たまにはいいでしょ!」
「まーいいけど。」

 今日は珍しく外でのデートだ。昨日は二人とも定時で上がった。

「牧場とか好きって知らなかったけど。」
「動物好きだけどなぁ?」
「ふーん。」
「あと、相島さんの運転!」
「あ?」

 紗弥が楽しみにしていたのは、どちらかと言えばそちらだった。牧場に行くことも楽しみだったが、相島が運転してくれることの方がずっと楽しみだった。

「へへへ。」
「…なんだよ。」
「運転している人の横顔が好きなの!」
「んだそれ。」
「横顔って、実はあんまり見れないでしょ?」
「そうか?横に並ぶことって多くね?」
「それはそうなんだけど、横に並んで私だけが暇になるって状況、こういうときくらいしかないかなって。」
「ふーん?」

 あまり腑に落ちていないといった表情ではあるものの、真っ直ぐに前を見つめて相島は運転を続ける。
 迎えに来てくれたときの相島を思い出して、そのスマートさに少し頬の温度が上がり、紗弥はそっと頬を押さえた。そのまま少し横を見ると、いつもとは違う横顔がそこにあって、それにもドキッと心臓がわかりやすく音を立てた。

(うう~…いつにも増して顔面偏差値が上がってるよ~相島さん!)

 元々の顔面偏差値が高い相島なのに、センスの良い外出用の私服(家デートの時は割とラフな格好をしている)と真面目な表情のせいで、紗弥が知る限りで最大の顔面偏差値をたたき出してしまっている。

(…私、変じゃないかなぁ。)

 そんなことまで気になり始めた。
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