ビターチョコをかじったら
甘えてみてもいいよな?
* * *

「はぁ~終わったぁ。お疲れ様、松山くん。初めての大きな仕事、疲れたでしょ?」
「お疲れ様でした。緊張する場面が多かったんですけど、雨宮さんがフォローしてくださったのでなんとか…終わりましたね。ありがとうございました。」

 新人を任されたのは4月で、ほぼマンツーマンでの指導にあたっていた。一緒に仕事をする以上、彼が有能になってくれれば紗弥も助かる。そもそも松山は礼儀正しく、真っ直ぐで教えがいのある後輩だった。

「相島くん、これの確認お願いできるかしら。」
「はい。この提案資料は次の会議にかけますよね?」
「ええ。」
「わかりました。すぐ確認します。」

 紗弥は相島をちらりと見た。相変わらず忙しそうではある。そして、厳しく仕事がやりにくいことで有名な相手ともそつなく仕事をこなすのだから凄い。会社で一目置かれるのも頷ける。

「雨宮さん。」
「んー?」
「あの、今度飲みに行きませんか?」
「え?」
「一つ乗り越えたので、お疲れ様会…ということで…お忙しければ断っていただいて構いません!」
「あ、ごめんね、そっか、そうだよね。飲み会、いやお疲れ様会、普通先輩が誘うものというか…行こう行こう。疲れを癒しに美味しいもの、食べよう。」
「いいんですか?」
「もちろん。」
「雨宮さんと松山くん、仲良くやってるみたいですね。」
「部長!お疲れ様です。」

 紗弥の会社での育ての親でもある部長がにっこりと笑ってそう言った。人手不足の紗弥の部署に新人を回すように取り計らってくれたのも部長だ。
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