ただ、そばにいて。
第一章 瑞希

1)ほんとうに欲しいもの



「妻がなにか感づいたようだ」

 男の口からこぼれたのは、三流ドラマのワンシーンのようなセリフだった。

 白い皿に盛られたアンティパストを眺めていた柏井瑞希《かしいみずき》は、はっとして顔をあげた。
 男はハイボールのグラスを持ち、大きな丸い氷を揺らしながら眼下に広がるきらびやかな街並みを眺めている。
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