最後の恋
「…し…の?」

『せいか〜い。礼央ね〜さっきまでは起きてたんだけど〜酔いつぶれて寝ちゃってんの。ごめんね〜。あ!でも、急ぎなら起こそうか?』


酔ってるのだろう。


悪びれない陽気な彼女の声から、そんな様子は伝わってきた。


酔いつぶれて眠っているという彼の側にどんな状況でいるのかは分からないけど、電話の向こうにいる2人は確実に一緒にいる。


向き合うと決めたばかりの私にとって、もう充分に目を背けたいくらい辛い現実だった。


今はただただ胸が痛かった。


「起こさないで!!」


思わず大きな声を出してしまい、慌てて口元を押さえた。


「ゴメン…また私から、かけ直すから電話があった事も言わないで。じゃあ…」


ボリュームを押さえた声でそう言って逃げるように電話を切ろうとした私の耳に聞こえてきたのは、妙に間延びした紫乃の残念そうな声だった。
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