最後の恋
そんな事があってからも、金曜日のお昼休みになると彼は必ず1人で図書室に来ていた。


そして私のいるカウンターへと借りたい本を持ってやってくる。


そして、私もまた彼にいつもと変わらぬ業務的な言葉と共に本を手渡す。


そんな日々は1年の間ずっと変わらずに続いていた。


それと同様、彼が彼女である紫乃とお昼休みを一緒に過ごしている火曜日のお昼休みも相変わらず続いていた。


あの日、たまたま休んだ先輩の代わりにカウンター当番を引き受けたのも火曜日のお昼休みだった。


彼らが、いつもどこでどんなふうに一緒に過ごしているのかは…あの日以外のことは何も知らないし、知る必要もない。


私も彼らも、何も変わらない日常を送っていると思ってた。


そして、そんな日がこれからもずっと続いていくものだと思っていた。
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