紫乃のことを知ったのは、始業式の事だった。


春休みを利用して祖母の家に遊びに行っていた私は、紫乃とはタイミングが合わず春休み中は1度しか会えなかった。


祖母の住む街は、私たちが父の仕事の都合で上京して来るまで住んでいた所だから私にとっても懐かしい故郷。


お正月にも両親と帰省していたから、約2ヶ月ぶりに再会した中学の同級生たちとのプチ同窓会等もあり私は楽しい春休みを過ごしていた。


紫乃と会ったのは、春休みも終わりに近づいた雨の日の午後だった。


それも、“ 旅行に行ってきたお土産を早く渡したくて ” 紫乃はいつもの笑顔でそう言って、いきなり家に訪ねてきたのだ。


彼女の様子からも特にいつもと違う事には気づかなかった。


ただ、忙しいのかあまり時間がないとは言っていたけど。だから、1時間ほどで帰って行った。


まさか、その日が紫乃との別れになるとはあの日の私は微塵も思っていなかった。