その瞬間、私の唇は先生によって塞がれた。
 彼の、硬くてちょっとタバコ臭い唇に。

 しばらく口づけたあと、彼はようやく顔を離した。

「少し落ちつけ。それより、なんで俺の昔の女の話なんかが出てくるんだよ」
「だって先生、私が『赤ちゃんできた』って言った次の日に、その人と会ってたじゃない。今日の式にも来ていたし……先生って、案外鬼畜だよね」
「なにが鬼畜だよ。惚れた女に気持ちを伝えることができない、ただのヘタレおやじなのに」

 先生の言葉に、ますます涙が溢れだす。

 惚れた女に気持ちを伝えることができない、かぁ。
 そんなに一途に想っていたんだ。

 結婚式を挙げたばかりだというのに、なんでこんなにミジメな気持ちにならなきゃいけないんだろう。


 今日もらったばかりの結婚指輪に目を落とすと、先生が私の左手に触れるところだった。
 そしてそのまま、薬指にはめられている指輪を抜きとられる。

 指輪……外されちゃった。
 ぼたぼたと、涙が洪水のように溢れだした。

 もうダメだ。
 結婚してもらったというのに不満をぶつけたから、とうとう愛想を尽かされちゃったんだ。

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