左手にハートを重ねて
【3】重なるハート
その瞬間、私の唇は先生によって塞がれた。
彼の、硬くてちょっとタバコ臭い唇に。
しばらく口づけたあと、彼はようやく顔を離した。
「少し落ちつけ。それより、なんで俺の昔の女の話なんかが出てくるんだよ」
「だって先生、私が『赤ちゃんできた』って言った次の日に、その人と会ってたじゃない。今日の式にも来ていたし……先生って、案外鬼畜だよね」
「なにが鬼畜だよ。惚れた女に気持ちを伝えることができない、ただのヘタレおやじなのに」
先生の言葉に、ますます涙が溢れだす。
惚れた女に気持ちを伝えることができない、かぁ。
そんなに一途に想っていたんだ。
結婚式を挙げたばかりだというのに、なんでこんなにミジメな気持ちにならなきゃいけないんだろう。
今日もらったばかりの結婚指輪に目を落とすと、先生が私の左手に触れるところだった。
そしてそのまま、薬指にはめられている指輪を抜きとられる。
指輪……外されちゃった。
ぼたぼたと、涙が洪水のように溢れだした。
もうダメだ。
結婚してもらったというのに不満をぶつけたから、とうとう愛想を尽かされちゃったんだ。
彼の、硬くてちょっとタバコ臭い唇に。
しばらく口づけたあと、彼はようやく顔を離した。
「少し落ちつけ。それより、なんで俺の昔の女の話なんかが出てくるんだよ」
「だって先生、私が『赤ちゃんできた』って言った次の日に、その人と会ってたじゃない。今日の式にも来ていたし……先生って、案外鬼畜だよね」
「なにが鬼畜だよ。惚れた女に気持ちを伝えることができない、ただのヘタレおやじなのに」
先生の言葉に、ますます涙が溢れだす。
惚れた女に気持ちを伝えることができない、かぁ。
そんなに一途に想っていたんだ。
結婚式を挙げたばかりだというのに、なんでこんなにミジメな気持ちにならなきゃいけないんだろう。
今日もらったばかりの結婚指輪に目を落とすと、先生が私の左手に触れるところだった。
そしてそのまま、薬指にはめられている指輪を抜きとられる。
指輪……外されちゃった。
ぼたぼたと、涙が洪水のように溢れだした。
もうダメだ。
結婚してもらったというのに不満をぶつけたから、とうとう愛想を尽かされちゃったんだ。