日常に、ほんの少しの恋を添えて

　特に深く考えたわけでもなく、専務があっさりとそんなことを言う。
　簡単に言ってくれちゃって。んなこと、ありますよ！
　……なんて反論はできず。私は黙って目の前にあるワインに手を伸ばす。すると即座に専務が私の方に視線をよこした。

「おい、お前何杯目だ。あんまり飲むなよ」
「大丈夫です、ちゃんと考えて飲んでますよ」
「ならいいけど……気を付けろよ」
「はい」

　と、ここまでは、私も意識をしっかり保って専務と会話をしていた。だけど幸せそうな新見さんをぼんやり見ていたり、何故か私の隣に座ったまま席を離れない専務に対しての若干の緊張などがそうさせたのか。ちょっとずつではあるがちびちびとワインを飲み続けた結果、知らない間に自分の許容量を超えていたことに私は気付いていなかった。

　気が付くと、私は見たこともない天井と睨めっこしていた。