日常に、ほんの少しの恋を添えて

酒にのまれる

「…………???」

 私の部屋の天井と同じ白い天井だけど、ダウンライトなんてうちにはない。
 てことは、だ。

「え……っ? ここどこ……!?」
「俺んち」

 横から飛んできた声に、背中がひんやりした。
 声がした方にがばっと体を起こすと、ボタンダウンシャツのボタンをいくつか外したラフな姿の専務が、ソファーに長い脚を投げ出し座っていた。
 私はその専務と向かい合わせのソファーで寝かされていて、体には毛布が掛けられていた。
 それを見た瞬間、私の頭の中でいろんなことが合致した。

 ――やっちゃった……!!

「あっ……もっ、申し訳ありませ、あでっ……!!」 

 勢いよく頭を下げたら、ズキン!とこめかみのあたりが痛んだ。

「飲みすぎだ、馬鹿」

 頭を抱え込んだ私に、専務が大きなため息をつく。

「俺がもうやめとけって言ったにもかかわらず『へーきです』とか言って飲み続けた結果がこれだよ。最後は席で寝こけて新見や花島が声かけても起きなかったんだ」
「ええ……!? で、でもなんで専務が??」

 専務が立ちあがりキッチンに向かう。

「お前寝てたから、全員を帰して起きるまで店のオーナーとしゃべってたんだよ。だけどお前全然起きなくてだな……閉店時間になって、いい加減店にも迷惑になるってわけで仕方なく俺んちに連れてきたわけ」
 
 キッチンから戻って来た専務の手には水の入ったコップが握られていて、彼はそれをスッと私に差し出した。

「あああすみません……」

 水を受け取り私は恐縮する。
 一口水を飲んでテーブルに置き、私はがっくりと項垂れた。

 なんという、醜態。
 専務の話を聞き終える前から、自分のしでかしたことで胃が痛い。
 恥ずかしい、いい年してこんなアホなことやらかして。しかも上司に迷惑かけて。

「……なんとお詫びすればいいのか……」

 絞り出すようにこう言って口元に手を持っていく。……が。
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