日常に、ほんの少しの恋を添えて
 休日の土曜日。前々から今日は電車で数十分の場所にあるショッピングモールに行こう! と決めていた私は、朝早く起きて洗濯や掃除などの雑用を済ませ、意気揚々と家を出た。

 暦上もうすぐ夏も終わりではあるが、まだまだ暑い日々が続く。

 今日の服装はクロップドパンツに緩いカットソー。そこに冷房対策で薄手の長いカーディガンを合わせ、毎朝通勤で歩く道筋をのんびり歩いた。

 電車に揺られ家から一番近い大型ショッピングモールにやって来た。ここへ来れば大抵のものは揃うので、色々な買い物をしなければいけないときは私はいつもここへ来る。

 そうそう。必ず見るキッチン雑貨の店とかね……アイデア商品とか、見てるだけで楽しくなっちゃう。
 財布のひもは固い方なので、そんなにガサガサと無計画な買い物はしない。が、見て歩く分にはタダだー、と軽い足取りでモール内を見て回る私の視界に意外な人物が現れた。

「あっ……!?」

 私は驚きのあまり口をあんぐり開け立ち止まる。すると何気なくこっちを見て私に気付いたその人が、驚きつつ方向転換して私のいる方へ歩き出した。

 なんで、こんなところで会っちゃうの??

 いつも見るスーツ姿の彼ではないが、黒のTシャツとベージュのチノパン姿がやけに様になっていて、通りがかる人たちの中には彼をちらりと盗み見る人もいた。その彼とは。

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