日常に、ほんの少しの恋を添えて
「お前もステーキ持ってきたな」
「だって、目の前で焼いてると食べたくなりますよ。でもここ、料理の数多いですね! それに補充も早いし、ちゃんと目が行き届いてる感じがします」
「ああ、仕事に無駄がない。人気があるのわかるな」

 さて、料理を頂こうと改まって専務と向かい合う。

「じゃ、いただきまーす」
「いただきます」

 葉物野菜を口に運びながら、食べている途中ではあるが私は一番肝心なことに気が付いた。

「あああっ!! 専務、今気が付きましたけど、休日に私とこんなとこで食事してたらまずいんじゃないですか? うちの会社の人間に見つかったりしたらえらいことに……」

 突然の私の剣幕にパスタを食べていた専務はビクッと体を震わせたが、すぐに「あー、びっくりした」と言って胸を撫で下ろす。

「それ、今言うか。お前と会ってからかれこれ一時間は経過してる。見られてるならもうとっくに見られてるよ」
「そ、そうですか……ていうか気が付くの遅いですよね……ど、どうしよう、明日会社で話題になってたりしたら」
「大丈夫だろ、もともとお前は俺の秘書なんだし、気になるんだったら仕事だったとでもいえばいい」
「でも私、今日思いっきりラフな格好なのでとても仕事しているようには見えないと思うんですが……」
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