おはようからおやすみまで蕩けさせて
プロポーズの理由
「よぉ、新婚イケメンリーダー」


喫煙コーナーで煙を吐き出し中、同期の山本雅也(やまもと まさや)が近付いて来る。


「何だよ、その呼び方は」


自分の隣に立つ奴を睨み、止めろよな…と言いながらタバコの火を揉み消す。


「お前、思い切ったことしたな」


掲示板で人だかりを見たぞと言いだし、大半の女子が泣き崩れていたな、と嫌味のような言葉を言われる。


「嫁さん、部下なんだって?」


「ああ、そうだよ。悪いか?」


隣に立つ山本がライターの在り処を探っている。
スーツの上着に入っている筈の物が見つからず、ズボンのポケットに手を突っ込む。


「ほら」


ライターの火を灯し目の前に翳してやった。


「サンキュ」


手を挙げた奴が火にタバコを近付ける。
そのまま一口吸い込み、フーッと細い煙を吐いた。


「…俺は悪くないと思うんだけどいいのか?あんなに女子を泣かせて後で恨まれるぞ」


脅すような言葉を言われ、何のことだと不機嫌になる。


「俺は別に恨まれるようなことはしてないが」


声を低めて反論する。
ここ数年は仕事だけに集中していたし、オフィスの女子にやたらと手など出してない。


「そうか?期待させる様な態度を取ってたんじゃないのか?」


「そんなことはしてないよ。ちゃんと区別はしていたつもりだ」


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