おはようからおやすみまで蕩けさせて
何をしても許される
「始業前に一服」と言って出て行った山本さんが戻って来たのは、始業開始五分前だった。

私は今日の商談について津田ちゃんや他のメンバー達とミーティング中だったから、彼のことを視界にも入れずに放っておいた。

すると、昨日天宮さんと話してた女子が席を立ち、彼のデスクに近付いて行く。「さっきの話、ホントですか〜?」と高めな声で問い合わせ、「本当だよ〜」とチャラい言い方で返した。



「本人にも言っといたから連れてくよ」


「でもぉ……いいの〜?」


ちらっと彼女がこっちを見てるようだけど気のせいか。
さっさと仕事を始めればいいのに。


「いいんだよ。俺に奴を預かれって言ったのは向こうなんだから」


預かれ…という言葉にピクッと耳が反応した。
それって何?私がさっき言った言葉?


資料を見てた目を上げ、二人のいる方向を眺める。
「どういう意味〜?」と聞く彼女に「何だか知らねーけど別居?」と答えてる。


「ええ〜っ別居!?」


大きな声が響き渡り、流石にミーティング中だったメンバーも振り向いた。


「二人とも私語は謹んで下さい」


頬の肉を引き攣らせて二人の顔を睨むと、チラッと視線を送ってきた彼女が「また後で」と席に戻る。
チャラそうな山本さんも決められた業務を始めたけど、鼻歌混じりで全然真面目そうではない。

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