円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
大団円


アリスに散々揺り動かされて、
ようやくエリノアは、目を覚ました。

日はすっかり高く上り、
柔らかい日差しが部屋の奥まで届いている。

「早くお支度してください。
伯爵夫人からまた、お小言をいわれますよ」

アリスが部屋中のカーテンを開け、
部屋の中はすっかり明るくなった。

「まぶしい……
アリス、有り難う。
もう、大丈夫よ。ちゃんと起きるから」

エリノアは体を起こすと、
着替えて食堂まで降りていった。

あくびを噛み殺しながら
食堂に入って行くと、どういう訳か
ウィリアムと顔を合わせた。

「ん?」

いつも朝早い彼が、
やっと食事を始めたところだった。

エリノアは、彼の横に座ると、
彼に話しかけた。


朝寝坊の侯爵様だなんて、
とても元気が出る。

「珍しい方がいらっしゃるのね」

ウィリアムは、
寝不足なのか赤い目をしていた。

「エリノア、今日は、
君の冗談に付き合ってる気力はないぞ」

「それはとっても残念ですわ。侯爵様」

「気分がすぐれないんだ」

「具合が悪いの?大丈夫なの?
熱は?それで、昨日も眠れなかったの?」

「エリノア、そんなに
いっぺんに聞かれても、
答えられないよ。
昨日もって、君はどうやら
千里眼のようだね。
見えないはずの昨日の僕の様子が、透けて見えるのかい?」

「わかったわ。
邪魔だとおっしゃるなら、すぐに消えますから」

心から心配してるのに、
ウィリアムに茶化されて
エリノアは面白くなくて、すぐにその場を離れようと思った。
< 151 / 195 >

この作品をシェア

pagetop