ぼくのセカイ征服
『計画:微動』
――近況。
特に、変わった事はない。強いて言うなら、暦が6月に入った事くらいだ。

「暇だねー、トオルくん、暇だねぇ〜…」
「…確かに、暇だな。それより、何で二回言ったんだ?」
「ん〜?大切だから…?」
「いや、問い掛けてる僕に対して聞くなよ…」


…部活が成立してから、かれこれ3日間。相変わらず、部室は教室のままだ。その片隅で黄昏れる僕は今、変態1人、不思議っ娘1人、良識人これまた1人、そして鬼一匹に囲まれている。

「――鬼という表現は、些か不適切ね。」
「うぉあっ!?」
「…何よ?鬼でも見たような声を出して…」
「…ちょっ、いきなり話し掛けるのはやめてくれ。普通に驚く。あと、人の心を読むのもついでに控えてくれ。」
「誰も、貴方の心を読んでなんかいないわ。顔に書いてあるのよ。貴方の考えている事は全て、ね。」
「………………」

やっぱり、僕は極端に顔に出やすいタイプのようだ。
まぁ、いくら顔に出るタイプとはいっても、ここまで正確に考えている事を当てられるのは有り得ないのだが、いくら考えても『何故ここまで思考が他人に露呈するのか』という疑問の答えは出そうにないので、最近では『やはり自分は顔に出やすいタイプ』と、適当に自分を納得させる事にしている。

――そうそう、そういえば先日、僕は往年よりの親友との和解に成功した。正直、冒頭のやり取りを見ればそんな事はわかるのだが。
僕が一方的に謝ると、彼女は申し訳なさそうに目を伏せ、その半瞬間後には、いつもの微笑みを顔中に湛えて、いつもの声色で、いつもと同じように話しをしてくれた。彼女には、本当に悪い事をしたし、それに伴って、僕は反省も後悔も充分にしたつもりだ。今回のいさかいでは、二度とあんな過ちを犯すまい、という決意が出来ただけ、人間として成長できた気がする。
やはり、世の中に無駄な事は一つもないんだなぁ、なんて思ったり。まぁ、二度とあんな事態は起こさないつもりだけど。


「――ところでそれ、何ていう本だ?」

と、ここで、僕はさっきから気になっていた質問をスミレにぶつけてみた。

「確かに、気になるなるっ!教えてよ、スミレちゃん!」
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