キミのトナリ


彼が病気でがんばっているから、私も仕事をがんばりたいと思っていた。

だけど、それはきっと本当は純粋な気持ちでもなかった。

彼のためといいながら、彼とのことから現実逃避するためだったような気がする。
仕事に没頭していれば、幾分は彼のことを考えなくてすんだ。

そして、両立している自分、仕事に恋に全力投球の自分、そんな自分に酔って、現状を満足させようとしていたんだと思う。



その日、ヘトヘトになって自宅に帰ると、高校時代の友人の結婚を知らせるハガキが届いていた。

式や披露宴はしないって随分前に会った時に言ってたっけ。

だけど、幸せそうなふたりの写真とあたたかな空気に包まれたコメントがどうしようもなく胸に突き刺さる。
友だちの幸せを素直に喜べない自分にまた胸が苦しくなる。


私だけがつらいんじゃない。

つらいのは彼も一緒。

ううん、むしろ彼のほうがつらいと思う。

一番大事な時期だった。
重要な仕事を任されてそれを成功させれば彼はもっともっと評価されるはずだった。


わかっているのに。
彼が一番つらいのに。

心が引き裂かれそうだった。


私はそのハガキを胸に抱いて泣いた。


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