俺様社長と極甘オフィス
油断も隙もない(自覚ある?)
 天候に問題なく、視界も良好。ヘリを操縦するには申し分ない。しかし、乗せている相手が相手なので私はどうも緊張気味だった。

 十分ほどのフライトを終え、再びB.C. square TOKYOのヘリポートに降り立つ。高度千フィートからの景色はなかなか気に入ってもらえたようだ。いや、正確にはヘリの搭乗にか。

「いやぁ、ヘリはいい。やや煩いのが難儀だが、ジェット機とは、また別の趣がある」

「気に入っていただけてなによりです」

 私はうやうやしく頭を下げる。今日は前一氏の友人である住友正明(すみともまさあき)さんとその秘書である磯山(いそやま)さんをヘリに乗せていた。

 住友さまは金融業界で名を馳せている人物で、前々から住友さまたっての希望でヘリに乗りたいという話があったのだが、なかなか機会がなく、ようやく実現できたのだ。

 その裏にある本音は、旧知の仲である前一氏のことを聞きだすためなのだが。

 今日は社長はどうしてもはずせない来客があるので、そちらを優先してもらっている。私がしっかりしなくては。

 そう意気込んだものの、住友さんからはこの前の鹿山さまのときと同じような話で、新しい有益な情報は得られなかった。

 ビルの屋上はどうしても風が強く、十月に入って全体的な平均気温も日々落ちている。ヘリポートからビル内に入って、ほっと一息ついたときだった。
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