俺様社長と極甘オフィス
誰とも違う君なので(意味わかる?)
 そもそもこの会社に入社しようとやって来たのは、別の条件でだった。土地だけではなく、いくつもの航空機も所有しているB.C. Building Inc.はビルに入っている他の企業と連携してヘリコプターを使った新しいサービスを企画、実行するため専属の操縦士を募集していた。私はそれに応募したのである。

 パイロットの父の影響で私にとって航空機は身近なものだった。自然と空への憧れが募り、数ある航空機のなかで、私が選んだのはヘリコプターだった。

 あのすぐそばに空がある感覚、自分で操縦していると伝わる緊張感、緊急時の必要性。父の仕事の都合でアメリカに住んでいるときに、ヘリコプターの免許をとった。

 帰国してからは、さらに事業用操縦士免許を取得し、ひたすらパイロットへの道のりを歩んでいた。そんなとき、どういうわけか父の勧めもあって、B.C. Building Inc.の専属操縦士募集の案内を受けてみることにしたのだ。

 試験は他の企業同様、書類、面接、そして実際にヘリコプターを操縦をする実技だ。私が操縦するときに乗っていたのはホテル業の役員と、当時専務であった彼だった。

 操縦には自信があったし、現にそのときも大きなトラブルに見舞われることもなく楽しくフライトができた。おかげであとは結果を待つだけの段になって、私は帰り際に彼に呼び止められたのだ。

『さっきは、フライトお疲れ様。志望者で若い女性なのは君くらいだよ』

 採用かどうかは後日郵送だと聞いていたので、彼が私になんの用があるのか、いまいち理解できなかった。そんな私に彼はじっと視線を寄越してきた。それは不快なものではなかったけれど、どうも照れてしまう。
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