プラス1℃の恋人

【6】台風上陸

 千坂に認めてもらいたい、彼に釣り合うような女になりたい。

 青羽は、仕事だけではなく私生活においても気合を入れるようになった。

 いつなにが起きてもいいように、下着もセットで揃えなおした。
 サボっていた自炊も再開した。

 アイスコーヒーを好んで飲んでいたが、鉄分の吸収を妨げると聞き、ミネラルウォーターやお茶に変えた。

 冷たいものは胃腸に負担がかかるらしいので、冷蔵庫には入れず常温で飲む。最初は慣れなかったが、いまはまったく平気だ。

 あとはスポーツでもすれば完璧なのだが、汗が出ない体質ということもあり、これは保留中。

「クマなし! テカリなし! メイクよし!」

 鏡に映った顔を覗いてみると、以前と比べて肌のつやがよくなったような気がする。
 あれほど疲れた顔をしていたのに、いまは女子力に満ちている。

 恋する乙女のパワーというのは、まったくもってすごい。

 涼しい席に移動になったということもあり、集中力も増した。
 持ち込まれる仕事をテキパキとさばき、就業時間内に終わらせて帰宅する。

 まぁこれは、集中できるタイムリミットが、オフィスのエアコンが効いている間だけという理由もあるのだが。


 ところがトラブルというものは、思わぬところに落ちている。

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