偽りの先生、幾千の涙
1つ目の嘘 壊れていく日常

side by 果穂



あれから1週間ぐらい経った。


私はあれから死のうとはしてない。


もう生きていたくない気持ちはあるが、興が削がれて死ぬ気にもなれない。


そんな無気力な日々を送る中、とうとう新学期が始まろうとしていた。


朝、面倒だとは思いながらも学校に行く支度をする。


学校に行かないと、それはそれで面倒なのだ。


髪をストレートアイロンで整えて、制服は決められた通りに着て、最低限のものしか入っていない鞄を持って、家を出る。


エレベーターから降りて、溜め息でも吐きたくなった時、鞄の中でスマホが震えた。


更に溜め息を吐きたくなりながら、震え続けるそれに耳をあてる。


「おはようございます、お父様。」


「おはよう、果穂。
今日から高校3年生だな。
おめでとう。
どうだ、勉強や学校は。」


「ありがとうございます。
お父様のおかげでとても順調ですよ。
あの、お父様、ご用件は何でしょうか?
実は今、駅の改札の前でして…」


改札まであと数分はかかるけど、早く切りたくて仕方ないのだ。


「そうか、それはすまない。
進級おめでとうと言いたかっただけで、用事はないんだ。」


「態々そのために?
お父様もお忙しいのにありがとうございます。
せっかくですけど、そろそろ乗りたい電車が来てしまうので、これで失礼します。」


「ああ、また連絡する。」 


電話はすぐに切れた。



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