冷徹ドクター 秘密の独占愛
悪夢の再来



たいして雨も降らないまま、関東地方は梅雨明け宣言が発表された。

今朝の天気予報では、気象予報士が水不足が心配だと話していた。

今日も照り付ける太陽が眩しく真夏日だ。


手鏡を持って歯ブラシを当ててもらっている口腔内を、ユニットの後方から鏡越しにチェックする。


「うん、これ、すごく当てやすいわ!」


背後にいる私へと振り返り、関さんはにこりと微笑んだ。


「良かった。歯間ブラシじゃ当たらないところは、このブラシで磨いてもらった方が良さそうですね」


この間、新商品だとチラシが貼られていた柔らかめの一歯用ブラシ。

担当になった関さんの口腔清掃にきっと役立つと思い、サンプルを取り寄せていた。

ブラッシング指導の予約が入っていた今日までに間に合ったので、早速使ってみてもらっている。


「じゃあこれ、帰りにいただいていくわ」

「あ、こちらサンプルなので、差し上げます。使ってみて良さそうなら、うちにも入れてもらえるよう先生に話してみるので」


そう言うと、関さんは「あら、ほんと?」とまたにこりと笑顔を浮かべた。


「ねぇ、浅木さん」

「はい」


手鏡を差し出しながら、関さんは「ふふふ」と笑う。

その意味深な笑みにギクリとしてしまった。

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