冷徹ドクター 秘密の独占愛
副院長宅で渡されたもの



歓迎会があった週末が明け、週の真ん中水曜日。


「え! 副院長、とですか?」


朝一、やって来た院長から衝撃的な申し出。

思わず院長の目が見開くほどの声を上げていた。


「さっきご家族から電話があってね、どうもあの右下七番が痛んで食事しないって言うんだよ」

「いずれExt(エキスト)って言ってた場所ですよね……」

「ああ、だから、今日律己先生と行ってもらって、抜歯してきてもらう予定になったから。律己先生にももう話してあるよ」

「そうですか……わかりました」


「簡単な抜歯だから、よろしくね」と言って去っていく院長を見つめながら、だったら院長が行って処置すればいいのに、と密かに思う。

院長は院内でも外科処置の患者さんは自分では診ず、他のドクターに回すと聞いていたけれど、今回は副院長にそれをお願いしたらしい。


今週頭、月曜日に院長と伺った居宅への往診。

八十二歳になる串田重雄(くしだしげお)さんは、義歯の不適合で同居する娘さんがうちの医院に往診の依頼をしてきた。

初診のため問診を娘さんにしたところ、最近義歯の調子が悪く、食欲がないと言う。

口腔内診査を行い、義歯調整をしたものの、右下の奥歯がかなり動揺していて、保存は難しいようだった。

義歯が合わないのもそのせいだ。

いずれ抜歯をする予定だったけど、それがこんなに急遽行なわれることになるなんて。

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