重い物ばかりが入ったスーパーの袋を二つ持ってくれた透さんは、玄関で靴を脱ぐと先に廊下を進んでいった。
突き当たりの磨りガラスのドアを肩で押し開け、奥の部屋に入っていく。
その背を見送りながら、私は靴のストラップを外した。


「お、お邪魔します……」


私と透さんの靴を玄関の隅に並べて置いてから、それほど重くないスーパーの袋を右手に一つ持ち、廊下を一歩踏み出す。
途端にドキドキと騒ぎ出す心臓を意識して、私は一度大きく深呼吸をした。


透さんの部屋に来たいと言ったのは私なのに、緊張してる。
自覚するのと同時に、私は左手を胸に当て、上着をぎゅうっと握り締めた。


緊張するのも当たり前だ。
だって今日は、恋人になってから初めての週末お家デート。
初めての彼の部屋に、初めての手料理。


初めて尽くしのドッキドキのシチュエーションがてんこ盛りだというのに、私は更に自分自身にミッションを課してここに来たんだから。
そうやって自分に言い聞かせ、決意を強めるごとに、私の緊張が煽られる。


とにかく一度落ち着け、とばかり、私は磨りガラスのドアの前で、唇をすぼめて一度大きく息をついた。
無意識に左手で握り拳を作ってから、部屋の中に足を踏み出す。
そのまま思わず立ち竦んだ。

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