修羅場の色
大人の関係
〝ポン〟と頭の上を軽く叩かれた。

 顔を上げると、目の前に副社長の顔があった。


「これ、頼むね…」


 副社長はニコリと笑って封筒を置き、そのまま肩で風を切るように去って行った。


「はい」


 私は、慌てて返事をした。



 私、飯山美優(いいやまみゆ)二十二才。


 私が勤める建設会社は、社員は三十名程の小さな会社だが、多くの下請け会社を抱えている。

 入社二年目で受付に座る私は、事務雑用も兼ねていて、副社長が置いて行った封筒も郵便物だ。


 社長の息子である副社長は、白河友也(しらかわともや)三十五才の妻子持ち。

 背が高く、堂々としていて近寄りがたい感じがある。
 しかし、笑った顔はクッシャっとなって好感度が上がる。

 
 副社長が私の頭を叩くのは毎度の事で、女性社員も少ないこの職場ではたいして気に止める人もいない。
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