視線から始まる
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あれからというもの、愛菜が瀬那に話し掛けることが多くなった。
瑠依に注意されたため、瀬那が読書の時に話し掛けてくることはなくなったが、用もないのに話し掛けてくるのは止めて欲しいと瀬那はげんなりしていた。
彼女と仲良くなる気などまったくないのだ。
「ねぇ、瀬那ちゃん」
(何か彼女の興味を引くようなことをしただろうか? まったく覚えがない)
瀬那は首を傾げるのだった。
「瀬那ちゃんは好きな子とかいるの?
私ねぇ、友達と恋バナするのが夢なの。
ねっ、どうなの?」
「いないから」
「えー、絶対いるよ。
意地悪しないで教えてよー」
いないと言っているのに何故嘘だと言い切るのか。
そんな親しい間からでもないのに、瀬那の何を知っているというのだろう。
例え好きな人がいたとしても、特に仲の良くない人間に言うわけがない。
それでもなお、ずけずけと立ち入ってくる無神経さと馴れ馴れしさに嫌気がさす。
こういう人は苦手だと瀬那は再確認する。
その点美玲は、明らかに嫌がっている相手に無理矢理踏み込んで来たりしない。
瀬那が読書をしたいなと思い出す頃合を測ったように、それとなく離れて時間を作ってくれる。
人への気遣いができる。
美玲に友達が多いのは、そういう彼女の性格の良さと気遣いによるものだろう。