視線から始まる




 眠い目をこすりベッドから起き上がり、お弁当を作るためにキッチンへ向かう。



 今日のお弁当はサンドイッチの予定だ。
 ハムに卵や、生クリームをたっぷり入れたフルーツサンドをせっせと作っていく。


 それが出来上がった頃……。



「おはよう、瀬那」

「おはよう、お兄ちゃん」




 瀬那の兄、神崎歩。


 瀬那より十二歳年上の兄は、学生時代に興した会社が大成功を収め、経済誌からも取材される若き青年実業家だ。



 瀬那は両親と離れ、ここで兄と二人暮らしをしている。




「おっ、今日はサンドイッチか、上手そうだな」

「朝食はちょっと待ってね。今すぐ作るから」

「それは良いけどさ、そのサンドイッチなんか多くないか?」




 目ざとい歩に、瀬那の心臓はどきりとする。



「それ瀬那の弁当箱だろ?
 一人で食べるにしては多すぎないか」

「美玲にもお裾分けするの」

「おお、そっか」



 納得してくれたようでほっとする。



 まさかあの一条院財閥の御曹司に食べさせるとは思いもしないだろう。



 枢とお昼ご飯を食べていることは、美玲にも言っていない。
 決してやましいことはないはずなのだが、なんとなく言いづらかった。












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