俺に見つかったのが運の尽きだー-ー


その言葉に、死よりも昏い淵に追いつめられた気がした。

伯爵である父を亡くし、親族に望まぬ結婚を強要され、絶望した
フロイラ・ラインハートは、ヴィンターハルター侯爵領の湖に身を投げた。

お姉さまに近いところで死にたいーーー

幼き日、母の療養先で一夏をともに過ごした、ヴィンターハルター侯爵家の
令嬢ルーシャを忘れられずにいたから。

死に切れず、若き侯爵クラウス・ヴィンターハルターに救けあげられ
屋敷に連れられたフロイラ。

フロイラの身の上話を聞き、鼻で笑うクラウスは、なぜかフロイラを生かすという。
「安逸な死など与えてやらん」


ここにいれば、いつかルーシャに会えるのではないかと、ヴィンターハルター家に
厄介になる身となったフロイラ。


社交界と女性が嫌いなことで有名、毒舌家で苛烈な性質のクラウスに
振り回されながら、ふと垣間見える彼の優しさに心は揺れる。

だが秘されたルーシャの存在は二人のあいだに重く横たわりーーー

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