冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
第1章/闖入者
なんだ、とクラウス・ヴィンターハルターはふりむいて半馬身後ろにつく、リュカ・クリストフに言葉を投げた。

「犬の様子がおかしいようです」
リュカは馬を止めた。

猟場番を呼び、なにごとか訊いている。
湖に鳥狩りに向かう途中だったが、先にやった猟犬の騒々しい吠え声があたりに響いている。

訓練された水猟犬だ。
じっと待機し、仕留めた獲物をくわえて泳いでくるように仕込まれている。

その犬たちが興奮して吠え立てている。

「侯爵様、リュカ様、こちらを」
従者が一人、何かを手にして駆けてくる。

受け取ったリュカはしげしげとそれを見つめる。
女もののショールだ。ややくたびれているが、上質の絹のものだ。
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