いつものように、春井と理香は打ち合わせ室にいた。
 男女二人っきりの空間だというのに、事故や事件の情報交換ばかりでまるっきり色事とは関係がない。


(とにかく、少しでも理香に認めてほしい)


 春井は少し焦っていた。
 それが、仕事に邁進する理由の一つにもなっていた。

「掲示板でとりあえず不妊治療をする病院として候補に考えているから、として病院の評判聞いてみたら、少し気になる書き込みがありました」
 春井は言う。

「え?」

 理香は春井に顔を寄せた。


(どうしてこの人は、無防備に近くに寄って来るのだろう)


 まるで、自分は男として考えられていないようで、少し傷つく。

 春井は下を向いて話を続けた。
「ここでの不妊治療はやめといたほうが良いって」
「別に腕は評判悪くないでしょうに」
「個別のメッセージが送れるので、こちらにメッセージ送って詳しい話を聞いてみようと思っているんです」
「相手の名前とかは?」
「ハンドルネームしかわかりません。ハンドルネーム『はる』さんという方です」
「わかった。メッセージに返事が着たら教えて」
 理香は、そういうと、「編集業務があるから」と打ち合わせ室を去った。



 そんな理香の後ろ姿を見て、春井は思う。

 最近までほとんど会っていなかったと言っていたが、あの花畑と理香の様子は、ただの先輩後輩ではないように思う。


(俺は手代木先輩のことが好きだ)



 しかし、理香の仕事を一緒にしていることで、理香は恋愛にはほとんどと言っていいほど、興味がないこともよく分かっていた。

 だから、逆にだれにもとられる心配がないと考えてもいたが、花畑が現れて、春井はこれからは今までのようにはいかないのではないかという不安にも駆られていたのだ。

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