私のご主人様Ⅲ
15.火種

引き金


午後の授業を終えて校門を出て少し先に、森末さんが車の中で待っていてくれた。

「おかえり。寝転がってもいいからな」

いつもと変わらない森末さんの様子に、まだなにも起こっていないことを示していてホッと息をつく。

屋敷に着いてからも変わった様子もなく、いつも通り夕食の支度を始めた。

「ことねぇー!」

「!?」

「お嬢、うるさい」

唐突に台所に飛び込んできた梨々香ちゃんに抱き付かれる。危ないです…。

暁くんは気にした様子もなく、手は止めていない。

「ことねぇ、手伝う!」

「包丁持たないでくださいよ」

「っ奏多よりは器用だもん!!」

そういえば、奏多さん遅いな…。

時計を見上げるともう18時を過ぎてる。いつもこれくらいの時間には戻ってきてくれるのに…。

ケータイを見ても連絡はなくて、 どうして帰ってこないのか分からない。

『今日、組員を殺す』

頭に浮かんだ声を振り払うように頭を振る。

そんなわけない。奏多さんがやられるなんて、そんなことあり得ない。

出来上がった肉じゃがをよそい、空になった鍋を流しに入れた。
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