一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
#10『裏切りパニック!』
「綺麗……」

ベッドに寝転び、腕を伸ばして蛍光灯の明かりに照らして見てしまっているのは、南さんにもらった婚約指輪。

左手薬指にはめたまま、眺め出してどれくらいの時間が過ぎただろうか。


日曜日の夜二十二時過ぎ。

昨夜は南さんのマンションに泊まり、夕方頃自宅まで送り届けてもらった。

そして久し振りにお父さんと三人で食事をとったんだけど、そこで南さんは再びお父さんに挨拶をしてくれたんだ。

『美弥さんと結婚させてください』って。


「だめだ、思い出しただけで胸が苦しい」

あまりの苦しさに両手で胸元を押さえてしまったとき、電話の着信音が鳴った。

「あれ、この着信音って確か……」

起き上がってスマホを手に取り確認すると、電話の相手は亜優だった。

すぐに出ると、電話越しからは明るい声が聞こえてきた。

『もしもし美弥? 久し振り、元気だった?』

「亜優久し振り。そっちこそ元気?」

ラインでやり取りするのがほとんどだったから、電話で話すのは久し振りだ。
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