きっかけは
これが恋?





「あ、彰!」





ピクッ

パソコンを軽快に弾いていた指が止まる

彰とは俺の事だ
吉岡彰(あきら)が俺のフルネームだ


そんな事はどうだっていい!
今、問題なのは呼んだ人間だ
そう、紛れもなく今の俺の人生の中で多大なる被害をもたらしてるヤツだ

キッとヤツを睨み付けようとしたら




「おぉ!山城!この資料山城が作ったのか?評判良かったぞ!俺も鼻が高かった!大口の取引だったから助かった!」

「いえ!課長のお役に立てたなら嬉しいです」

「そうだ!お礼に飲みにでも行くか?」



はぁー?
俺の睨みを呆気なく奪った営業課課長は今度は可憐を飲みに誘ってる

そんなのお礼を口実にしたナンパだろ!


可憐も可憐だ!
俺を呼んどいて!俺の睨みをスルー、いや、見てもいない!





「可憐!」



俺は思わず可憐の名前を乱暴に吐き捨てる
俺の声に一瞬静かになった

やばっ

俺は何イラついてんだ?




「彰?どうしたの?」



可憐が俺の声に課長から俺へと意識を向けたのがわかった


何となく感じる、優越感



「どうしたの?じゃねぇし、先に呼んだのお前だろ?」


「あはは!ごめんごめん」



俺を覗き込むようにする可憐から可憐の香りがする


あ、可憐の匂いだ



フワッと香る優しい香りに
いつもと変わらない香りにホッとする







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