泥酔ドクター拾いました。
「奈緒。そんなに泥酔男に会いたくないのなら、寮に帰ってくる?」

「それだけは、お断り」

「そう言うと思ったぁ。でもさ、入職して6年間は住めるんだよ。家賃だって激安だよ」

私の呟いた言葉を聞き逃さなかった美樹が、本気とも冗談ともつかない表情で探るように言った言葉を私は即答で断ってみる。

そんな私の反応に美樹は今度は声をたてて笑った。


「あんなにお祝いムードで退寮したっていうのに、今更帰れないよ」

独身寮っていっても、病院が借り上げているマンションのことで、築年数も古くはないし、職場からかなり近い。
それに家賃なんてほとんどタダに近いのだから、その魅力に惹かれないわけがない。

けれど、私が独身寮に帰れない、ううん、帰りづらいのには理由がある。


私の言葉に美樹が笑うのを止める。

「元カレとのこと?そんなの皆忘れているって。あんまり気にしなくてもいいのに」


元カレという、美樹の言葉に胸の奥が痛みを覚えた。


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