「もう、どうして私なんですか?」

大和田先生が赴任して2週間が経とうとしていた。
今、小さな入院患者用の面談室で二人きり。
ソファーに座り、血管の程よく浮き出た二の腕を私に突き出した大和田先生。そんな彼の腕を酒精綿で消毒しながら、私は冷たい視線を送る。


どうしてこんなことになったのかっていうと、それは数10分ほど前に遡る。

久しぶりの日勤帯の勤務を終えた、17時過ぎ。ようやく申し送りを終えて、ナースステーションの角を曲がったところで、廊下に面した入院患者用の小さな面談室に急に手首をつかまれ、引き込まれた。


大声を上げることすら忘れて、手首を掴んだ相手を見上げると、その相手は大和田先生。

彼は口元に人差し指を置いて、少しだけ申し訳なさそうな顔をしながら、静かにするようにと視線を送ってくる。
そして、手には採決キットを持っていたのだった。