オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
私の徹底リサーチ、ロケハンぶりはまるで戦国時代の軍師のように入念だからということで、そのあだ名かついた。
旅行って華やかな業種に合わないお堅いあだ名。大嫌い。

それに旅館名を言っただけでその情報がポンと出てくる向居も向居よ。
人のこと調子よく褒めつつ自分だってやることはやっているんじゃない。本当、この男のこういうところも嫌い。


「でもそこ、高かったんじゃないか?」

「高かったわよ。さっきの五万の半分以上を占めているんだから」


ずばり奮発して一泊三万の部屋にした。
もちろん食事は部屋食だ。


「恋人と行く癒しの旅」がテーマの今回の企画。私はそこに「極上」を加えることで差別化をはかることにした。

この地域は新幹線が通る以前からいち早く観光を売りにかかげた開発に取り組んでいて、伝統の風情を残しつつ若者に受けるような要素もくわえ、古とモダンの融合を進めていた。
旅行会社もそんな動きに注目し、開発が進むとともに取り扱いを増やし、この地域の新しい試みをフォーカスしてきた。

けれども、あえて私はかねてより培われてきた「古」の方に注目することにした。

この地域は戦国時代の武将が妻と二人三脚で奮闘し手に入れた領地だ。
気候や地形に合わせた頑強とした建造物、現代では最高級と言われるようになった伝統工芸、そして風土に合わせた多彩な食といった特産が、夫婦が築き上げた街を華やかで洗練された城下町へと発展させてきた。現代もその名残は色濃く残り、初代藩主である武将夫婦をしのばせる名所が多く存在する。

だから、新スポットとして焦点を当てられ始めた今こそ、そんな夫婦の面影を感じつつ、ゆったりとした風情のなかで伝統と華やかさをたのしむべきだと私は思った。
それこそまさに、洗練された大人の男女のためのひとときだと踏んだからだ。

そしてそれを叶えるのは、普段とはひと味ちがったワンランク上の旅。
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