オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
朝は遅くまで眠りをむさぼって、起きたらゆっくり時間をかけてメイクや髪を整える。
だって旅行だもん、いつも以上に着飾って気合を入れなくちゃ―――って…心を解放する旅なのに、どうしていつも以上に着飾って気を張らなきゃならないんだろう。

そりゃあ、お洒落してお洒落な街並みを歩くのは楽しい。
特に大好きな彼と一緒となれば、いつも以上に気合を入れたい。
けどそれは今回の旅のテーマにはそぐわない。
向居の方が、そのことをずっとよくわきまえていた。


「逢坂は、これから宿に戻って朝食をすませた後は、どうする予定なんだ?」


向居が訊いてきた。


「…そうね…私のプランでは、この後は人力車に乗って街を散策することにしているわ」


人力車は事前に予約していた。
腕時計を見る。予約時間まで、あと四時間だから…帰って朝食を食べたらすぐ化粧して移動して…ってバタバタするな…。


「そうか、それなら早く戻らないとな」

「いいわよ。まだゆっくりで」


立ち上がろうとした向居を制して、私はコーヒーをすすった。


「せっかくの美味しいコーヒー、ゆっくり味わいたいし」

「そうか。まだ間に合うか」


すると向居は、急にふぅとらしからぬ溜息をついて、頬杖をついた。
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