空と君との間に
「おっし!じゃあこの後はカラオケに行こう!」


その提案は、全員一致し、俺達はカラオケBOXに向かった。




「こういう時って、誰が最初に歌うかで、数分時間くうんだよな」


それに対して、美紗は言った。


「じゃあ、隆志君が先に入れてよ。私は一番は嫌」


「分かった!ではまず、俺の美声をお聞かせしよう!」


……………


それは、はっきり言って、上手いとは言えない代物だった…


「うん……よし次だ、次!」


「何か、問題あった?」


隆志の歌には、とりあえずコメントを控えた。


次の順で、優子が歌い、その後、俺が歌った…



「空君、上手いね!ボーカルすればいいのに」


「ボーカルは、俺が入った時もういたし…それに、ギターに集中したいっていうのもあるし…」


「ふぅん…勿体ないよ!」


「何か、納得いかないな…」


隆志から、冷たい視線を浴びた…


そんな中、美紗が選曲した曲が、流れ出した。




何の変哲もない、ミディアムバラードの曲だった…




俺は今まで、多くの友達とカラオケに来たが、こんな経験は初めてだった。


歌いだした途端、その綺麗な歌声に、鳥肌を立てたのだ。


……上手い!素人のレベルじゃない!


俺はいつからか、音楽を、楽曲のよさで判断する、癖が付いていた。


プロの歌い手は、皆それなりに歌が上手い。

さほど、ボーカルの方には、気を向けていなかった。


ただ、美紗の歌声は、その楽曲を気にさせず、素直で自然に、そして、衝撃的に耳に入ってきた。


おそらくそれは、俺の過大評価ではなく、天才的に上手いものだった…


美紗は、プロになれる才能を持っている…


「松永、すげぇ上手い!プロ目指してただけあるよ!」


「ありがと…でもやっぱり無理無理!夢は夢よ」


「もっと自分に自信持ちなよ!ちゃんと頑張れば、絶対に夢は叶うって!」


「そうかな…」


俺はこの時、美紗がプロの歌手になる事を、リアルに想像することができた。


俺にとっては、それぐらい、衝撃的だったんだ。
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