空と君との間に

電話

夏休みも中旬に差し掛かり、明後日は、みんなで海に行く日だ。


そういえば、地元の海水浴場以外に行くのは、始めてだな…


出無精…という訳ではないが、わざわざ海に行くのに、市外に行く必要もなかった。


一度だけ、小さい頃に、市内ではあるが、離島の海水浴場に行ったことがあるくらいだ。


その時のことは、よくは覚えていないが、うちの家族だけではなく、別の家族と、一緒だったような気がする…




「空〜!電話よ〜」


母の声だ。


「誰から?」


「…名前、忘れた!でも女の子よ。あんたも中々やるわねぇ…」


「何をだよ?!」


…女?…美紗か?!


俺は、少しばかり期待して、受話器を取った。


「もしもし…」


「あっ、空君?私、優子!」


優子か…


「おぉ、どうした?」


「あのさ、明後日なんだけど、美紗が行けなくなっちゃって…」


何ー?!まじかよ?!いや、ここは冷静を装って…


「あっ、そうなんだ。また何で?」


「…以外と冷静ね…つまんないの!嘘よ、嘘!ちゃんと来ます。」


「何だよ、くだらねぇ…で、用件は何だよ?」


「あのさ、一応泊まりじゃない?私も美紗も、親に言い訳するのに、困ってるのよ。お互いの家に泊まる、っていうのも無理だし…」


「あぁ、なるほど…でも、俺にもどうしようもないだろ」


「そこで考えたの。私達がバレー部の合宿で、ってことにして…空君には、顧問の小柳先生のフリをして欲しいの」


美紗達は、バレー部に所属していた。そこまで、熱中してはないらしいが…


「はっ?!俺が?」


「そう。じゃなきゃ、泊まりで海なんて、絶対無理だよ…」


「…じゃあ、やるしかないか…」


「私の家に、掛けてくれればいいから。後は、こっちで何とかする。よろしくね」




…変な作戦に協力しないといけなくなったな…


しかし、バレないもんか?


これも、美紗達と海に行くための、試練として考えるしかない…


…やるしかないか。



俺は、次の日の夕方、優子宅に電話した。


顧問のフリをして。
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