君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
3.鏡の部屋
「う…、いたたた」

ぼやける視界の中で、腕に力を入れて体を起こす。
次第に、薄暗い部屋の様子が見えるようになってきた。

目を引くのは、ぼやけた視界の中でも捉えることができていた背丈以上ある大きな鏡。
縁は細かな装飾が施されている。

他に目を向けると、布がかけられた荷物がたくさん積み上げられているだけだった。
大きな鏡も、木でできた天井や壁も、たくさんの荷物も、見覚えのあるものなど何一つなかった。

「ここ、どこ…?」

さっきまで控室にいたはず。
衣装のドレスだって着たままだし。

天井近くにある窓から入ってくる月明かりだけが、部屋の中を灯している。
あんな白くて丸い月、見たことない。
ちょっと、不気味かも。
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