君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
2.劇団の危機
「全然駄目だ、もう一回!
何度言ったらわかる?
気持ちが入ってない!伝わってこない!」

「すいません…」

舞台上に立つ私に、監督からの怒号が飛んでくる。

歌に気持ちが入ってないと注意を受けるのは何度目だろう。
もう数えきれないくらい。

鮮やかな黄色いドレスがどんどん重たくなってくる。
目の前の客席もどんよりと澱んで見える。

「ここのクライマックスは、ヒロインの心情を全面に出す場面だろ?

ここで観客の涙を誘うんだ!
今の神楽弥の歌じゃ誰も感情移入できない!」

「はい、すいません…」

そんなこと、自分が一番よくわかってる。
ヒロインの心情を想像してやってるけど、上手く表現できない。

私のせいで稽古が中断する。
その不甲斐なさと、自分の能力不足の悔しさに、涙が溢れそうになる。
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