君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
見つめ合うと、心が通じ合う気がする。
たぶん私たちは、今同じくらいドキドキしてる。

「あー、王子がいるー!」

っ!

ビクッと肩が震え、子どもの声のした方を見る。
そこにはこちらを指さす男の子。
そしてその隣には、したり顔で笑うシン。

「邪魔された…」

小さくそう漏らすと、力なく腕が下がっていく。

「大丈夫?」

「大丈夫じゃない」

なんて弱気な王子なんだ…。
でもちょっと可愛い。

「王子はこんなところで何してるの?
歌のお姉さんを見に来たの?」

「ま、まぁ、そんなところだ」

かわいらしい子どもを前にしても、落ち込んでいる。
そんなにショックだったんだろうか…。
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